2026.8.18.

同じものが、同じようには育たない
同じブレスレットが、二本あります。
一方は、今日届いたばかりの新品。
もう一方は、何年着けているのか自分でも思い出せないくらい、ずっと身につけている僕の私物です。
並べてみると、同じものとは思えないくらい違います。
新品は白く光っていて、一つ一つのパーツの形がよく見える。
僕のものは、かなり黒い。
でも、ただ黒くくすんでいるだけではありません。
黒く残っているところもあれば、またシルバーらしく光っているところもある。
同じBirdboneとして始まったはずなのに、ここまで違う顔になる。
なんだか面白くて、しばらく二本を並べて眺めていました。
最初の一本は、あとから特別になる
このBirdbone Braceletは、僕が初めて買ったJill Platnerです。
とはいえ、最初から夢中だったわけではありません。
前職のお店で初めて見た時は、正直「なんだこれ」という感覚の方が強かったと思います。
僕は昔から、新しいものにすぐ飛びつくタイプではありません。
何度も見ているうちに、少しずつ気になってくる。
「やっぱりいいな」と思った頃には、もう売り切れている。
だから二回目の入荷で買うことも多いんです。
Jillも、そんなふうに少しずつ気になっていったブランドでした。
そのうち、自分でも何か一つ欲しいと思うようになり、選んだのがこのBirdbone Braceletでした。
これが、僕とJill Platnerとの最初の一本になりました。
くすみの、その先へ
買ってからは、ほとんど外していません。
Jill Platnerの作品を編んでいるのは、ゴア社の『Tenara』という耐久性の高い糸です。
水にも汗にも強いので、シャワーの時もそのまま。泳ぐ時もそのまま。
そうやって毎日着けているうちに、シルバーは当然くすんでいきます。
磨けば綺麗になります。
でも僕は、少しずつ黒くなっていく石のような感じが好きで、そのままにしていました。
すると、ある時から少し様子が変わってきました。
黒くなって終わりじゃなかったんです。
パーツ同士が擦れるところだけが、また少しずつ光り始めました。
黒く残るところと、光るところ。その差が少しずつ大きくなっていく。
僕はこれを、勝手に『くすみの向こう側』と呼んでいます。
時間をかけて、名前に追いつく
そして今日、新品のBirdbone Braceletが届きました。
久しぶりに自分のものと並べてみて、初めて気付いたことがあります。
黒くなった僕の方が、Birdboneという名前に近い。
Birdboneは、鳥の骨を思わせる小さなシルバーパーツが連なった作品です。
新品の状態でも、その造形はもちろん完成しています。
でも時間が経って、凹凸の奥が黒くなり、擦れ合うところだけがまた光り始めると、一つ一つの境目に陰影が生まれます。
節のようなものが浮かび上がってくる。
ばらばらのパーツが連なっているというより、本当に骨と骨がつながっているように見えてくるんです。
長く使ったから偉い、というような話ではありません。新品には新品の綺麗さがあります。
ただ、これだけ長く身につけてきて、今日初めて分かったことがある。
このブレスレットは、時間が経つことで、少しずつ名前に追いついていくのかもしれません。
好きでいようとしなくても、残るもの
気付けば、この仕事を始めて二十年近くになります。
その間、着る服はずいぶん変わりました。デザイナーズも着ました。アメカジも、ミリタリーも、アウトドアも、色々通ってきました。
でも、その横でこのBirdbone Braceletは、何食わぬ顔でずっと手首にいました。
ずっと好きでいようと思って、好きでいたわけではありません。一生ものにしようと思って買ったわけでもありません。
ただ、ずっと着けていました。
その時間の結果が、今日並べた二本にはっきり出ています。
最初に買ったJill Platnerが、今も手元にある。
しかも新品と並べてみたら、昔より今の方が、Birdboneらしく見える。
新品より、今の方が好きです。
きっと、この先はもっと好きになるんだと思います。





