2026.7.19.

Jill Platner Slices Convertible Stacker

重さの話

普通なら、欠点として紹介される話から始めます。

このネックレスは、結構重いんです。

アクセサリーとして考えれば、軽い方がいいのかもしれません。

でも不思議なことに、その「欠点」こそが、この作品らしさを一番よく表していました。

歩くたびに、胸元でコツン。

また少し歩くと、今度はトン。

鳩尾あたりに小さく当たりながら、「ここにいるよ」とでも言うように存在を知らせてきます。

アクセサリーなのに、身につけていることを忘れさせてくれない。

普通なら、それは欠点なのかもしれません。

なのに、不思議と嫌にならないんです。

Jill Platner Slices Convertible Stacker

名前をたどる

『Slices Convertible Stacker』。

正直、この名前だけでは何を意味しているのかよく分かりませんでした。

『Slices』は、スライスチーズの”スライス”と同じだから何となく想像がつく。

『Stacker』も、「積み重ねる」という意味なんだろうな、と。

でも、『Convertible』だけは分かりませんでした。

気になって調べてみると、「変形できる」「用途を変えられる」という意味があるそうです。

なるほど。

だからパーツが回転するのか。

どこを前にしてもいい。

正面も決まっていない。

そういう意味だったんですね。

そう思ってもう一度このネックレスを眺めてみると、少し見え方が変わりました。

Jill Platner Slices Convertible Stacker

デザインではなく彫刻として

身につけるたびに少しずつ表情が変わる。

きっと、そのことを『Convertible』と呼んでいるのでしょう。

でも、僕が何度眺めても感心してしまうのは、そこではありません。

このシルバーの枚数です。

一枚多くても違う。

一枚少なくても違う。

そのギリギリのところで成り立っている気がするんです。

だから、デザインというより彫刻を見ている感覚に近い。

Jill Platner Slices Convertible Stacker

そして『Convertible』という構造の面白さを入り口にしながら、僕の興味は自然と別のところへ移っていきました。

『Stacker』。

積み重ねる。

その言葉を見ても、最初はまだぼんやりしていました。

でも、もう一度このネックレスを眺めているうちに、少しずつ腑に落ちてきたんです。

「あぁ、そういうことか。」

僕なりに意訳すると、

「積み重ねられた断片」。

そんな作品なんじゃないかと思いました。

Jill Platner Slices Convertible Stacker

人それぞれの断片

その断片は、人それぞれです。

このネックレスを手に入れた日も、その一つになる。

そのあとに積み重なっていく時間も、きっとそうです。

だから、理由なんて本当に何でもいい。

頑張った自分へのご褒美でもいい。

大切な節目の記念でもいい。

何かを乗り越えるためでもいい。

その人にとって意味があるなら、それだけで十分。

だから、この作品には決まった答えがありません。

身につける人によって、少しずつ意味が変わっていく。

そんな作品なんだと思います。

Jill Platner Slices Convertible Stacker

胸元に積み重なるもの

僕が最初に『重い』と書いた理由も、たぶんそこにあります。

歩くたびに、

コツン。

トン。

胸元で、小さく存在を知らせてくる。

それは単なるシルバーの重さなのか。

それとも、自分の中で積み重ねてきた時間の重みなのか。

そんなことを考えてしまいます。

だから僕は、このネックレスをアクセサリーとして紹介しているつもりはありません。

その人だけの時間や記憶が、このネックレスと一緒に少しずつ積み重なっていく。

そんな作品なんだと思っています。

それがきっと、何かの力になってくれるから。