アトリエの静寂に、ハンティングの意匠を添えて
Post O’Allsの今シーズンの新型ショップコート『Atelier DEE』。
アトリエコートらしい落ち着いた佇まいを土台にしながら、フロントにはハンティングジャケットに着想を得たDEEポケットを備えた一着です。
どこかユーモラスで、道具感の漂う独特なポケットの形状。
ですが袖を通してみると、ポケットの存在は自然と装いに溶け込み、気づくと手が収まっている。
動きの中でこそ完成する、道具としての必然性
下側を縫い付けない“ふらし”構造によって、ポケットが歩く動作に合わせて自然に揺れ、重なり合うことでフロントに立体的な奥行きが生まれます。
デザインとして主張するというより、動いたときに初めて意味を持つ。
そんな道具としての必然性が感じられる作りです。
ハンティング由来の力強さを持ちながら、ベースはあくまでショップコート、アトリエコートの文脈。
だから土臭くなりすぎず、フレンチワークとアメリカンワークのちょうど中間にあるような絶妙なバランスに収まっています。
表情を変えるシルエットと、静かな後ろ姿
ボタンを上まで留めれば、ワークウェアらしい構築的なAラインの佇まいに。
フロントを開けて羽織れば、風をはらんで流れるような軽快なシルエットへと変化します。
センターベントもしっかりと深く取られているため、ロング丈ながら後ろ姿は静かで、余計な主張がありません。
生地には、インディゴ染めしたキャンバスをディープウォッシュで仕上げた素材を使用しています。
平織りのキャンバスらしい、デニムとは違う乾いた手触りがありつつ、洗いをかけることで、最初から身体にすっと馴染む柔らかさがあります。
欧州のワークウェアを彷彿とさせる、キャンバスの奥行き
やわらかいけれど、頼りないわけではない。
その感覚が、袖を通したときにきちんと伝わってきます。
特に目を引くのが、主要な縫製箇所に現れたパッカリングです。
インディゴの色味と同色で入れられたステッチが、生地に静かに重なり、派手さはないのに、立体感と奥行きがじわじわと浮かび上がってくる。
綾織りのデニムにはない、平織りならではの表情で、どこかフランスやドイツの古いワークウェアを思わせる落ち着きがあります。
完成はまだ先。ちょうど「五合目」に立つ素材の余白
すでに時間を重ねたような顔つきですが、ここで完成というわけではありません。
着込むほどに体に沿い、色やシワが少しずつ深まっていく。
その変化を待てる余白が残って、完成形はまだ先。
今は、ちょうど五合目あたりに立っている素材だと思います。
その「まだ先」は、生地だけの話ではありません。
DEEポケットの裏側には、さらに二つのポケットが仕込まれており、表からは見えないその部分にも、使い込むことで少しずつ表情が刻まれていきます。
ディープウォッシュで時間をショートカットしながらも、これから先にしか現れない変化をきちんと残している。
その細かな仕掛けが、このコートへの期待を静かにつないでくれます。
季節を跨ぎ、着るほどに深まる「静かな仕掛け」
厚みは重すぎず、かといって頼りなくもない中肉のキャンバス。
デニムほどの重量感はないけれど、シャツよりもしっかりしていて、羽織ったときに自然と安心感があります。
わずかに長めの着丈を活かして、まだ肌寒い時期にはジャケットの上から、あるいはこのコートの上にさらにベストを重ねるような自由なレイヤードも楽しめます。
春先にはカットソーの上にさらっと羽織るだけでも様になります。
バスクシャツでフレンチヴィンテージに寄せるもよし、ハットやベレーで職人気質に振るもよし。
ハンティングの機能美と、アトリエの知性が同居する『Atelier DEE』は、すでに時間を重ねたような顔をしながら、細部にはこれからの変化を待つ余白が残された一着です。
着るほどに、その静かな仕掛けがじわじわ効いてくるコートだと思います。















