Post Gジャン
所謂『Gジャン』の元祖、Levisの1st。
街で着やすい3rdや、70505(4thっていうんかな?)は、サンプリングされる機会も多く原型を知らなくても認知されているデザインですが、それに比べると、1stや2ndは玄人向けというか、ちょっと前までは洋服業界の人が好んで着ているイメージ。
本家リーバイスからも復刻されていたり、どこかしらのブランドが毎シーズンリリースしているのですが、個人的に僕の触手が動くのは、ステッチが黄色や黄土色ではなく、同色もしくは暗めな糸で縫われている物。
これが意外とありそうで、無いんです。
デザインだけで探せばあるかもしれないですが、そういうことじゃない。
と、いうことで、僕が絶大な信頼を置いているPost O’Allsから、20年ぶりに『Ranchero』がリリースされました。
20年ぶり、Ranchero
今回は『Ranchero』、前回が『Ranchero 2』で、前々回のGジャンは『El Ranchero 3』。
同じような名前ですが、いろんな所がちょっとずつ違います。
『Ranchero』は、Post O’Alls最初のジージャンの品番で1990年代半ばにリリースされました。
デザイナー大淵さんが所有する1920年代のリーバイス1stジャケットをベースに、1930年代のストロングホールド社(L.Aのワークウエアブランド)のGジャンをフュージョンした、今聞いても相当マニアックな背景。
その後にリリースされた『El Ranchero』は、1940〜50年代のエル・ランチェロ(テキサスのマイナーブランド)のGジャンの袖付け(カバーオールのカフスの仕様)を持ち、生地の設定が薄手なので、インナーからミッドレイヤー、アウターまでをカバーするジャケットとして派生していきました。
そして今回、2000年代前半以来、約20年ぶりに復活した『Ranchero』。
初代ランチェロはポケットがホームベース型の1ポケットでした。
今回のアップデートは、肩付けをドロップショルダーにして、袖の生地を横使いにしたりと、ランチェロのインスピレーションでもあったストロングホールドの要素をより濃く反映したものになっています。
基本に忠実なレイアウト
さて、あれこれと書いておりますが、パッと見はリーバイスの1stに代表される、胸の切り返し、左右2本ずつのプリーツ、胸ポケット1つというベーシックなレイアウト。
ですが、細かく見ていくとあれこれキラリと輝くディテールが散りばめられています。
まず、襟。戦前の1stなどに見られる直角のワイドスプレッドとギリギリに走っているコバステッチ。これはたまに襟を立てて着たくなる時に重宝するディテールです。
そして、ボタン。メタルボタンに光沢感のあるブラックの塗装を施してあり、着用や洗濯を繰り返していくことによって塗装が剥げてきて、地の銀色が出てきます。
僕が持っている昔のエル・ランチェロは、ボタンがカッパーにブラック塗装だったので、いい感じに地の色が出てきました。
ボタンの大きさは前回のエル・ランチェロ3の小径ボタンと比べるとひとまわり大きくなって、フロントボタンの数が5つから4つに減っています。
たしか、戦時中の1stはフロントボタンが4つだったような。
そして、ステッチ。ボディーと同じ色の糸で縫われているので、全体的に大人なムード。小さな所ですが、これが個人的にかなり大きい。
ステッチの色がアウトラインになって、主張するかしないかで同じ『Denim』という生地を使っていてもムードが全然違います。
そして肩から袖、袖から脇下を通って腰へとおちていく曲線の美しさ。
アームホールは太めにとってあり、秋冬はスウェットや厚手の物を着ててもストレスなく着用できます。
12oz selvedge denim
今回の生地は12ozのデニムなので、比較的薄手の生地で展開されてきたポストのGジャンの中では厚手の分類になります。
今までの幅広い守備範囲のものよりは、アウター寄りに設定されていると思いますが、その分、デニムらしいしっかりとした色落ちが楽しめます。
僕は、自分で育てていくワンウォッシュのみをセレクトしましたが、ポストのwebサイトにはインディゴブルーのディープウォッシュバージョンがあり、色落ちした時のイメージが分かりやすく載っておりますので、もしよかったら見てみて下さい(ブラックのディープウォッシュはありません。)
ちょっと生地の厚みが違うのですが、ブラックデニムが色落ちした感じは私物のエプロンの色がわかりやすいので、こちらも参考にしてみてください。
ワークとカウボーイの中間地点
サンフランシスコのリーバイスから始まり、ロサンゼルスのストロングホールド、テキサスのエル・ランチェロといった、味わい深いワークウエアを紐解き、丁寧にデザインされたPost O’Allsの『Ranchero』。
ワークとカウボーイの中間的な立ち位置。
大淵さんは「テックスメックス・スタイルのカウボーイジャケット」と表現されていました。
テキサス風メキシコ料理のような、肩肘張らずラフに羽織って、楽しんでもらえればいいなと思います。