柄なのに、無地みたいに使える
「柄なのに、無地みたいに使えるシャツです。」
この一言が、一番しっくりくるかもしれません。
QUILPの『WECKL』は、ロンドンで森下さんが見つけたデッドストックのコットンリネンを使った一枚。
細かなハウンドトゥースは、近くで見るとちゃんと柄なのに、少し離れると淡いグレーに見える。
その行き来する見え方が、このシャツの面白さをつくっている気がします。
静かだけど、軽やか
もともとハウンドトゥースは、羊飼いの服から始まった実用的な柄で、汚れが目立ちにくく、遠目には落ち着いて見える。
そこに英国的な品のある空気が重なって、気づけば『きちんとした柄』として扱われるようになった背景があります。
ただ、このシャツに関しては、その『きちんと感』がいい具合に抜いてある。
コットン55%、リネン45%の生地は、リネンのドライなタッチが前に出ていて、肌離れもいい。
見た目は穏やかで静かなんですが、着てみるとどこか軽やかで、さっぱりしている。
そのバランスがちょうどいいんです。
後ろに流れる設計
シルエットは、QUILPらしく少し後ろに重心を持たせた設計。
肩ヨークもわずかに後ろ寄りで、裾も後ろが5cm長い。
横から見たときに、すっと流れるようなラインが出ます。
ジャケットの下に着たときに、後ろだけ少し覗く感じも、個人的にはかなり好きなポイントです。
肩や身幅にはゆとりを持たせながら、アームホールはすっきり。
袖口や襟も窮屈さはなく、それでいてだらしなくならない。
このあたりのバランスはさすがだなと思いますし、リネン特有の縦に上がってくるクセも見越して作られているように感じます。
控えめな工夫が効いている
胸ポケットは両胸仕様ですが、片方は内側に。
表に並べると少し主張が強くなるところを、あえて隠している。
この控えめな工夫、好きです。
僕は勝手に『セキュリティーポケット』なんて呼んでいますが、実際に使ってみると案外便利です。
縫製もとてもクリーンで、細かな運針とキワのコバステッチのおかげで、縫製糸の存在感がほとんど見えない。
ただ、サイドスリットの丸みのあるマチだけは、少し手の温もりを感じる仕上げになっていて、その対比もいい。
静かに出番を奪っていく一枚
襟はいつものQUILPより少し大きめで、一枚で着てもちゃんと成立する顔つき。
縦長のボックスシルエットなので、カットソーの上から軽く羽織るような使い方もできる。
今はまだジャケットの内側に収まることが多いですが、これから気温が上がってくると、自然と外に出てくるはずです。
そこから先の期間が、きっといちばん長い。
そんなふうに付き合っていけるシャツだと思います。
穏やかで、静かで、でもしっかり使える。
気を張らずに手に取れるのに、ちゃんと服としての面白さも残っている。
そんなバランスのシャツです。
だから最初に言った通り、
「柄なのに、無地みたいに使えるシャツです。」
気づいたら、自然とこればかり着ている。
静かに出番を奪っていく一枚です。



















