暮らしからこぼれ落ちた、素朴で健康的な美しさ
人の暮らしの中から生まれてきた布には、独特の美しさがあります。長い時間の中で無駄が削がれ、人の営みに自然と馴染んできたものだけが持つ、素朴で健康的な美しさ。
このコートに使われている『Farmers Linen』も、そんな布です。
今回使われているのは、ドイツの農村部で穀物や小麦粉を保管する袋に伝統的に使われてきたリネン生地。
農家の暮らしの中にあった Farmers Linen を、フランクリーダーが少量確保できたことから生まれたコートです。
もともとはファッションのための布ではなく、生活の道具として織られ、使われてきたものです。
形を変えながら、愛され続ける理由
このタイプの布は、ドイツ南部や東部の農村地帯など、伝統的にリネンが栽培され、多くの農民が暮らしていた地域で主に作られていました。
最初は穀物袋や小麦粉袋として、その後はテーブルクロスや家庭用品として使い継がれてきたものも多かったそうです。
使い捨てるのではなく、形を変えながら暮らしの中に残っていく。
その背景を知ると、この生地が持つ素朴さや力強さにも自然と納得がいきます。
同じ風土で育った、三兄弟のような親和性
このコートの面白さは、3種類の異なるストライプが使われていることにもあります。
とはいえ、いわゆる派手な切り替えの面白さではありません。
ストライプは本来、もっと意志の強い柄だと思います。
リズムが整っていて、きりっと見えるし、時に少し緊張感もある。
でもフランクが見つけてくるストライプは、そういう強さとは少し違う。
先日ご紹介したシャツもそうでしたが、きっぱりとした溌剌さよりも、少し枯れたような穏やかさがある。
親しみやすくて、滋味深い。
そんな空気を持ったストライプです。
しかも今回は、その穏やかなストライプが3種類集まっています。
それぞれピッチは違うのに、不思議とばらついて見えません。
同じ地域で生まれ、同じ空気の中で使われてきた布だからなのか、どこか通じ合うものがある。
たまたま兄弟3人が集まったみたいな感覚というか、それぞれ違うのに、やっぱりどこか似ている。
そんなことを考えながら眺めていると、とても面白い生地だと思います。
デザイナーが布に捧げる、土地と文化への敬意
フランクが見つけてくる布には、いつも理由があるように思います。
ただ古いだけではなく、その布が持っている本当の美しさをきちんと理解している。
生地そのものだけでなく、こうした布を作り、守り、受け継いできた人たちや土地の文化に対する敬意がまずある。
そのリスペクトがあるからこそ、この人にならと託されて、こうした伝統的な生地を譲ってもらえたのではないか。
もちろん想像ではありますが、このコートにはそう思いたくなる誠実さがあります。
着るほどに馴染む、風通しの良い『育てる』服
形もとてもいいです。
楽ちんなラグランスリーブに、マチ付きの大きめのポケット。
カットソーの上からでも様になるスタンドカラーと、首元から前立てにかけての印象的なライン。
ボリュームのあるボディですが、重たく見えず、春夏でも軽やかに羽織れるバランスに整えられています。
しっかりとした触感がありながら、リネン100%ならではの柔らかさと風通しもあり、着ていくうちにさらに馴染み、表情も変わっていくはずです。
生活の中から生まれた、美しくて丈夫な布。
その布の穏やかさや親しみやすさを損なわず、3種類のストライプがひとつのコートとして成立している。
大袈裟な言い方ですが、土地の空気や、人の営みや、受け継がれてきた感覚まで一緒に身に纏うような一着です。















