High Closure Jacket
ジャケットのようなコートのような不思議なジャケットFrank Lederの『High Closure Jacket』。
ナポレオンジャケットやインドのネルージャケット、日本の古着でたまに見る国鉄のジャケットなど、軍物やワークジャケットの要素が強そうな形ですが、結構好きですこのタイプ。
フランクの考え方だと、寒い冬にわざわざVゾーンを開ける必要がない、身幅をたっぷり取る必要もない、裏張りして暖かい空気をしっかり溜め込んでもらおう、という意図が読み取れるこのジャケットは、秋冬のジャケットとしてとっても合理的な形をしています。
Dead Stock Vintage Fabric
もはや当たり前のようにリリースしてくる既視感のない生地は、ウロコのような波のような糸の流れを持つ厚手のウール素材。
もちろんデッドストックのビンテージファブリックです。
ポロシャツの鹿の子編みのようにも見えますが、現代の機械で作るには相当のコストがかかってしまいそうな、珍しいリズムを持つ味わい深い生地です。
細かい部分も抜かりなく
裏側にはブラウンに染められたベッドシーツのようなタフなコットンの生地が張られ、袖裏にはこれまたビンテージファブリックのリネンの生地が贅沢に使われています。
ブルーベースのストライプなので、袖口は折り返してチラ見せのアクセントとして使っても良さそう。
首元まで6つ付いているアンティークのボタンは少しマーブルがかったウッド調の穏やかな色合い。
ネイビーのジャケットだけど気取った感じがしないのは、きっとこのボタンのおかげです。
少し低めに設定された二つのポケットにはフラップが設けてあり、中に入れても出したままでもいけるようになっていて、フラップを出すとちょっとクラシックなムードになります。
第三、第四ボタンの間にはスマートフォンがすっぽりと入る位のスラッシュポケットがあり、さりげないけど使える、気の利いたデザイン。
立体的に仕立ててあるアームの脇下はゆとりがありますが、袖口にかけて少しずつ細くなっていくのでスッキリと見えます。
美しい過去の素材を新しい感性で料理する
全体的なフィットはテーラードジャケットのようなスッキリとした少し細身のデザインですが、ボタンを全部とめて着ると美しいシルエットが、全部外して着ると前襟から裾にかけてラウンドしていく前合わせの美しさが際立ち、第三、第四だけとめたりと、その時の気分でボタンのとめかたを変えるだけで、楽しみ方が変わる、フランクらしい型にはまらない独特なジャケットです。
基本をしっかりとおさえているからこその遊びというか、テクニックで実用性を高めながら、生地選びで視覚と触覚に訴える。
誰もが忘れていた、もしくは見向きもせず通り過ぎていった過去の美しいものに気付き、足を止め、そこに価値を見出し、新しいものに昇華させる。
フランクリーダーは、その感性と技術を持って『サステナブル』な方法でコレクションを発表している稀有なデザイナーです。