SCiENCE LONDON Fishtail Parka TG-02 Dark Panel

¥352,000

SCiENCE LONDONのフィッシュテールパーカは、流行やシーンの文脈では語りきれない、強い意志を持った一着です。
1980年代ロンドンでティム・ウォリンジャーが生み出したその服づくりは、合理性と衝動、理性と実験のあいだを行き来しながら、ただ「自分が信じる形」を追い続けるものでした。
M-51をベースに、左右非対称のパネル構成で組み上げられたこのパーカは、一見すると奔放なツギハギのようでありながら、その実態は極めて構築的。
生地の厚みや重さ、縫製順や重心まで数ミリ単位で設計された、知性の塊のような服です。
その複雑さゆえ、過去には完成までに数年を要し、「現実的ではない服」として限られた機会にしか作られてきませんでした。
今回の復活は単なる復刻ではなく、その思想を深く理解した日本人の手によって、意志が正しく受け継がれた結果です。
イギリスの生地を使い、イギリスの職人が縫い上げる。
取り外し可能なライニングは単体でも成立し、装着時と非装着時でシルエットと着心地が大きく変化するなど、着方そのものまで設計されています。
誰に向けた服でもなく、売るための服でもない。
ただ、この形でなければならなかった一着。
SCiENCE LONDONのフィッシュテールパーカは、『価値』という言葉の本当の意味を静かに教えてくれる完成形です。

―Origin―
England

―Material―
たくさんの生地が切り替わっている為、改めて記載します。

―Size―

S – 後着丈 97cm 身幅 67cm 袖丈 60cm 肩幅 60cm
M – 後着丈 98cm 身幅 69cm 袖丈 61cm 肩幅 63cm

168cm 65kg Sサイズ着用

商品コード: SCiENCE LONDON Fishtail Parka TG-02 Dark Panel カテゴリー: , , タグ: , , , , , , ,

説明

理性と実験の終着点 —— SCiENCE LONDONという名の「完全体」

SCiENCE LONDONというブランドを語るとき、つい「歴史」や「希少性」といった言葉から話を始めてしまいがちですが、本当はそんな入口から語る服ではないと思っています。

これは流行やシーンの産物ではなく、もっと個人的で、もっと不器用で、そして膨大な時間と情熱を必要とする場所で生まれた、ティムの「意志」そのものだからです。

1980年代、ロンドン。

ティム・ウォリンジャー(Tim Wallinger)の手によって、SCiENCEは生まれました。

当時、まだ珍しかった独立系メンズウェアデザイナーとして活動していた彼の服づくりは、クラシックでもストリートでもない、どこか張り詰めたような緊張感をまとっていました。

時代に迎合せず、自分が信じる形だけを追い続ける。

合理性と衝動、理性と実験。そのせめぎ合いを、服という形に落とし込む。

〈SCiENCE〉という名前には、そんな彼の姿勢がそのまま刻まれています。

構築的な“ツギハギ”

今回、長い沈黙を破って復活したこのフィッシュテールパーカは、SCiENCEというブランドを象徴する一着です。

ベースにあるのはM-51フィッシュテールパーカ。
しかしそこには、左右非対称に、パネル状に切り替えられた複数の素材が混在しています。

一見すると、それは奔放な“ツギハギ”に見えるかもしれません。

けれど、その実態は極めて構築的で、極めて理性的なプロダクトです。

パーツごとに異なる生地を使い、それぞれの厚み、張り、重さを細かく読み取りながら組み上げる。

視覚的なインパクトの裏側には、数ミリ単位で設計されたバランスと、冷静すぎるほど整理された設計図が存在します。

感覚で作られているように見えて、実は「感覚だけ」では決して辿り着けない。

このパーカは、そんな高い知性の上に成り立っています。

「現実的ではない服」が持つ価値

このパーカを成立させるには、膨大な時間が必要です。

過去にこのパネル仕様が作られたときも、完成までに3年ほどかかったと聞いています。

理由は単純です。

効率や量産のロジックを優先した瞬間に、この服は成立しなくなるから。

生地の組み合わせ、縫製の順番、仕上がりのわずかな重心の違い。

ひとつでも妥協すれば、この圧倒的な存在感は生まれません。

だからこそ、この服は常に「現実的ではない服」として、限られた時間の中でしか生み出されてこなかったのだと思います。

ライニングがつくる、もうひとつの完成度

このパーカの完成度を語るうえで、もうひとつ欠かせないのがライニングの存在です。

付属品、と呼ぶにはあまりにも仕事をしすぎている。

このライニングは、単体で見れば一着のカーディガンジャケットのように成立しています。

しっかりと厚みがあり、袖を通すと想像以上に暖かい。
軽いインナーではなく、れっきとしたアウター寄りの存在感です。

コートに装着した状態では、その重みが自然と全体を下へ引き、シルエットがすっと落ち着く。
重心が下がることで風が入りにくくなり、着心地はより“防寒着らしい”ものへと変わります。
見た目にも、ずっしりとした安心感が加わる。

一方で、ライニングを外したときの変化も驚くほどはっきりしています。

コート単体になると、空気を含んだような軽やかさが現れる。
身幅や裾に余白が生まれ、風が入れ替わるような感覚すらある。
春や秋には、この表情の変化がとても心地いい。

コートとして着る。

ライニングを重ねて着る。

そして、ライニングだけを一着として着る。

この三つの状態すべてが最初から想定され、バランスまで含めて設計されている。

「取り外せる」という機能の話ではなく、着方が変わることで服の性格そのものが切り替わる。

その変化までもが、きっと計算のうちなのだと思います。

10年の月日と、消えなかった憧れ

実は、僕はこのパネル状のフィッシュテールパーカを、ずっと欲しいと思っていました。

かつて、僕が働いていた店に、このモデルが入荷してきたことがあったんです。

洋服屋として、「お客さんが先」というのは当たり前のこと。

頭では分かっていながら、心の中では「売れないでくれ」と念じてしまった。

でも、そんな願いも虚しく、そのパーカはすぐに完売しました。

嬉しさと同時に、どうしようもない悔しさが残った。

不思議と、その気持ちは時間が経っても消えませんでした。

その後、どうしてもサイエンスのパーカが欲しくて、一着だけ用意してもらったのが、いまも10年以上着続けているオイルドコットンのモデルです。

自分以外に着ている人を見たこともないし、展示会に行くと諸先輩方に褒められることも多い。とても気に入っている一着です。

それでも、心のどこかにはずっと

「もし、あのパネルのフィッシュテールがもう一度作られるなら」

そんな思いが燻り続けていました。

受け継がれた意志、そして英国の矜持

その後、さまざまな事情が重なり、SCiENCEのフィッシュテールパーカは長い間作られなくなりました。

ティム自身は第一線を退き、正直、もう二度と作られないと思っていました。

だから今回の復活は、単なる「復刻」ではありません。

長年ティムの仕事を愛し、その思想を深く理解してきた日本人の手によって、その意志が再び形になったのです。

イギリスの生地を使い、イギリスの職人が縫い上げる。

実験的で前衛的なデザインの深層に、揺るぎない英国のクラフトマンシップが脈打っている。

例えば、ライニングの縁を彩る伝統的なハウンドトゥース(千鳥格子)のパイピング。

装着したとき、縁からほんの少しだけ覗くように計算されたその出具合は、出過ぎず、隠れすぎない。

ダークトーンを基調とした静かな世界の中で、気づく人だけが気づく、美しいアクセントです。

そして、ライニングに至るまで一切の妥協を排したその作りは、「便利さ」よりも「正しさ」を、何よりも優先していることを静かに物語っています。

完全体という言葉の意味

このパーカを見ていると、「誰に向けて作られたのか」という問いそのものが、あまり意味を持たないように思えてきます。

マーケティングの回答や、売りやすさという名の正解のための服でもなく、誰かにアピールするための服でもない。

そこにあるのは、「どうしてもこの形でなければならなかった」という剥き出しの意志だけです。

擦り切れても気にせず着る。

破れたら直す。

時間とともに変わっていく姿さえも、そのまま受け入れてくれる。

誰も着ていない。

けれど、決して奇抜ではない。

それは、着る側の「覚悟」を静かに問いかけてくる、アートピースのような服です。

『価値』の意味を問いかける一着

正直に言うと、

おすすめしたい気持ちと、教えたくない気持ちが、今も同時にあります。

本当は、店で、顔を見て、喋って売りたい。

売れてしまう不安と、旅立っていく寂しさ。

それでも、誰かの人生に残ってほしいという願い。

あの日の憧れと、復活の嬉しさと、売れていく未練。

すべてが詰まった一着です。

1980年代から作り続けられてきた、SCiENCE LONDONのフィッシュテールパーカ。

これは、一つの完成形です。

服の値段を超えて、

『価値』という言葉の本当の意味を、静かに教えてくれる一着だと思っています。

追加情報

サイズ

S, M

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