説明
白い半袖シャツなのに、人が立ち止まる
白い半袖シャツなのに、なぜか人が立ち止まる。
QUILPの『KAY』。
他の服と一緒に並んでいる時は、そこまででもないんです。
でも壁に一枚で吊るした途端に変わる。
なんだろう。
なんか気になる。
理由はたぶん、前から見た時の違和感です。
前身頃だけがニット。
後ろ身頃や袖、襟、ポケットはシャツ地。
説明すると少し変な話なんですが、実物を見るとなんだか自然。
前から見るとニット。
後ろから見るとシャツ。
まるで途中で別の服に着替えたみたいなのに、一枚の服としてちゃんと成立しています。
QUILPらしい違和感
僕はこういう服を見るたびに、
「なんでこんな服を作ろうと思ったんだろう」
と思います。
全部シャツ地で作ればもっと簡単だったはずです。
前も後ろもニットなら話も早い。
でも、そうしなかった。
その面倒なことをわざわざやっている。
その理由は森下さんに聞いてみないと分かりません。
でも、このブランドを長く見ていると少しだけ分かる気もします。
QUILPの服って、元になった服はちゃんとあるんです。
ワークシャツだったり。
パジャマシャツだったり。
カバーオールだったり。
でも、そのままでは終わらない。
一度ばらして、どこか別の要素を混ぜて、もう一度組み直しているような感覚があります。
だから見たことがあるようで、見たことがない。
このKAYもまさにそんな一枚です。
ニットとシャツの境界線
ベースはワークシャツ。
ゆったりした身幅に、少し長めの袖。
でも前身頃にはデッドストックのコットンニットが使われています。
しかも、いわゆるニットポロのような上品な編み地ではありません。
少しサーマルを思わせる凹凸のある表情。
風もよく抜けるので、真夏でも快適です。
インナーを変えて少し遊ぶこともできます。
ただ、それより面白いのは、そのニットの上にスタンドカラーが乗っていることです。
普通なら少しちぐはぐになりそうなのに、なぜかまとまって見える。
この「ギリギリ成立している感じ」が本当に上手い。
近づくと面白い、離れると静か
横から見た姿も印象的です。
前はニット。
後ろはブロード。
異なる素材なのに境界線だけが浮くこともなく、自然につながっている。
ニットと布帛。
柔らかさと品の良さ。
ワークシャツとニット。
本来なら少し喧嘩しそうな要素ばかりなのに、この服の中では静かに共存しています。
真っ白ではなく、少しナチュラルな色合わせもいいんですよね。
切り替えの服なのに強く見えない。
近づくと面白い。
でも遠目には静か。
その加減も含めて、とてもQUILPらしいと思います。
まだ見たことのない白シャツ
たぶんこれは、『白い半袖シャツが欲しい人』が買う服ではありません。
白いシャツなら、世の中にたくさんあります。
でも、まだ見たことのない白シャツなら欲しい。
そう思ったことがある人には、このシャツの面白さはきっと伝わるはずです。
僕自身、こういう服を見ると少し嬉しくなります。
まだこんな作り方があったのか。
まだこんな白シャツがあったのか。
そんな気持ちにさせてくれる一枚です。