説明
これだけでいいと思った
今季、Frank Lederのコートはこれ一着だけにしました。
他にもいくつかありました。
でも展示会でこれを見た時、今回はもうこれだけでいいかなと思ったんです。
もともと好きだったダスターコートの形に、見たことのないネイビーのウールアルパカ。
何着も並べるより、この一着をちゃんと見てもらえればいい。
そんな気持ちで選びました。
青の奥にあるもの
ウール80%、アルパカ20%。
色は深いネイビーです。
ただ、一般的なウールのネイビーとは少し違います。
近くで見ると、濃い色の中に白い毛がふわっと混ざっている。
アルパカ特有の長い毛足によるものだと思いますが、それが表面を薄く覆うことで、ネイビーそのものに奥行きが生まれています。
暗い場所では静かな濃紺。
明るいところでは青みと白い毛が浮かび、少し銀色がかったようにも見える。
さらに光を受けると、毛足に沿って細かな艶が現れます。
ウール100%のネイビーにはない、少し湿度を含んだような色気があります。
見えないところに、いちばん惹かれる
形はFrank Lederのダスターコート。
着丈112cm、身幅72cm。
かなりたっぷりしたロングコートですが、着た時には数字ほど重たく見えません。
一枚仕立てであること。
肩を決めすぎないラグランスリーブ。
そして何より、背中に深く入ったプリーツ。
前から見ると、長い着丈と大きな身頃が素直に下へ落ちます。
ポケットもその面を大きく崩さず、輪郭だけを残すように付いています。
でも、後ろを向くと印象が変わります。
首元から長く伸びたプリーツの中に、かなりの量の生地が隠れている。
その始点には、小さな逆三角形の補強。
立っている時にはほとんど閉じていますが、歩いたり腕を動かしたりすると、そこからゆっくり生地が開いていきます。
自分ではまず見えないところなんですが、このコートはやっぱり後ろ姿が格好いい。
しかも今回は、毛足のあるネイビーです。
大きな背中の面で光を拾い、動くたびにネイビーの濃淡まで変わって見える。
静止している時より、着て動いた時の方が、この布の良さまでよく分かります。
そこだけ、浮かせる
細部を見ると、つくりはかなり抑えています。
ポケットは表側にもう一枚大きな袋を貼り付けるのではなく、袋部分を内側へ入れたつくり。
表に見えるのは、口とその輪郭だけです。
これだけ表情のある生地なので、なるべく大きな面をそのまま残したかったのかなと思います。
その一方で、ボタンだけは消していません。
深いネイビーの上に、ベージュの斑らなヴィンテージボタン。
同色で馴染ませれば、もっと一体感のある見え方にもできたはずです。
でも、あえてこの色。
毛足のある濃いネイビーの中に、古いボタンだけがふわっと浮いて見えます。
こういう選び方に、Frank Lederらしさを感じます。
誰が着ても、同じにはならない
サイズは今回もSだけです。
僕は168cm、65kg。
裄丈は93cmあるので、僕にはやはり袖が少し長く、今回も5cmほど折り返して着ています。
これまで同じ形を、155cmくらいの女性にも、175cmくらいの男性にも選んでもらいました。
小柄な人が着れば、身体をすっぽり包むように。
背の高い人が着れば、丈が少し落ち着き、たっぷりした身頃の量が残る。
一つのサイズなのに、着る人が変わるとコートの見え方も変わります。
それでも、この大きな形の美しさはちゃんと残る。
僕がこのダスターコートを何度も選んできた理由の一つです。
好きな形だから選んだ。
そして今年は、そこにこのネイビーがありました。
フランクのコートは、今回これ一着。
この後ろ姿と、この少し変わったネイビーを好きだと思う人が一人いれば。
それで充分です。