説明
近くでは点描、離れると深い赤紫
柄物ではないのに、かなり存在感がある。
でも近くで見ると、その強さの中に少し可愛らしさもあります。
南チロル、ドロミテ山脈に近いドイツ語圏。
伝統的なアルプス生地を専門にする、小さな工場で作られたウールです。
生地の中には、落ち着いた赤と白の細かな点。
そこにパープルやチャコールグレーが混ざり、ごく稀にオレンジの糸や、藁のようなものまで入り込んでいます。
近くで見ると、まるで点描です。
でも少し離れると、それらが混ざり合って、バーガンディーともチャコールとも言い切れない、深い赤紫のような色に見えてくる。
しかも、その色は光によってまた変わります。
室内や写真では赤みが前に出て、太陽の下ではチャコールの勢力が増す。
赤いパンツなのか、チャコールのパンツなのか。
見る場所によって、その答えが少しずつ変わります。
触ると、ウールはドライな質感。
さらっと軽いというより、薄手のブランケットに近いくらい、しっかりとした生地です。
だからこそ、この2タックの形にした時に、腰まわりのふくらみや裾の溜まり方まできちんと残ります。
楽なのに、楽な服の顔をしていない
形は、Frank Lederで毎シーズンのようにオーダーしている2タックのドローストリングトラウザーズ。
紐で締めるイージーな仕様です。
僕自身、この形がかなり気に入っていて、毎シーズン何かしらの生地で提案しています。
ただ、今回の一本には、いわゆるイージーパンツの軽さがほとんどありません。
腰まわりを見せなければ、ジャケットやシャツを合わせた時には、かなりきちんとしたトラウザーズに見えます。
でも穿いている本人は楽。
2タックで腰には充分なゆとりがあり、そこから裾までゆったり落ちていく。
楽なのに、楽な服の顔をしていない。
とはいえ、生地が伸びるわけでもないし、気軽に洗えるようなイージーケアの素材でもありません。
しっかりとしたウールです。
ワンマイルウェアではなく、完全によそ行き型のイージーパンツ。
この少しの緊張感が、むしろ大事なんだと思います。
強い色なのに、合わせる相手を選ばない
合わせてみると、思っている以上に包容力があります。
白や黒のシャツ、チャコールやブラウンのアウター、少し柄のあるジャケット、スポーティーなブルゾン。
わりと見境なくあれこれ合わせてみましたが、どれも意外としっくりきました。
赤いパンツと言ってしまうと難しそうに聞こえますが、チャコールやパープルが細かく混ざっているので、合わせる色の幅はかなり広いです。
白なら赤みが浮き、黒やチャコールなら暗い色の中へ馴染む。
見せないところまで、ちゃんと作る
そして、このトラウザーズは前にも後ろにもポケットがあるのに、面白いくらい見えません。
生地の細かな点の中に、その輪郭まで紛れています。
後ろはベージュのヴィンテージボタンがあるから、なんとかそこにポケットがあると分かるくらい。
徹底的に消しています。
これだけ表情のある生地だからこそ、余計な線を増やさなかったのかもしれません。
裏側も面白いです。
前身頃の内側には、膝下あたりまで滑りのいい裏地が付けられています。
しっかりしたウールが脚に引っ掛からず、穿いた時にすっと落ちるための細かな配慮です。
そしてポケットの内側には、グレーのリネン。
これがまた、見えないところに使うにはもったいないくらいいい生地なんです。
正直、これだけでシャツを作ってくださいと思ってしまいました。
表からは見えない場所にまで、ちゃんといい生地を使う。
こういうところを見ると、やっぱりFrank Lederの服は表面だけでは分からないと思います。
ウールを穿く、という少しの贅沢
同じDotted Red Woolでは、シャツも作られています。
上下で着ると、この赤紫の色が一気に前へ出ます。
ただ、少し離れて見ると細かな点はひとつの色に溶けるので、いわゆる柄物のセットアップとはまた違う見え方です。
シャツで着る時。
パンツで穿く時。
上下で着る時。
同じ生地なのに、それぞれ少しずつ表情が変わります。
そして改めて思うのですが、ウールのパンツって、なんだか少し贅沢です。
もっと扱いやすい素材はいくらでもある。
それでも、寒くなってくるとウールを穿きたくなる。
今日はこれを穿こうと思って選ぶ。
そんな少しの手間まで含めて、僕はウールのパンツが好きなんだと思います。