説明
温故知新の極み
フランクリーダーの服を手に取るとき、いつも思うのは「説明より、まず触ってほしい」ということです。
このGrey × BrownのJanker Jacketも、まさにそんな一着。
Janker(ヤンカー)は、もともとオーストリアやドイツ・バイエルン地方で着られてきた、狩猟や労働のための実用的な上着。
地域の民族衣装としての側面も持ちながら、直線的で無駄のない形は、当時の暮らしの中で自然と磨かれてきたものです。
フランクは、そうした背景をきちんと踏まえたうえで、民族的な装飾だけを削ぎ落とし、いまの生活の中で違和感なく着られる形へと整えています。
ノーカラーに近い襟元と、ストンと落ちるボックスシルエット。
その佇まいには、歴史への敬意と同時に、現代的な生活へのアプローチが感じられます。
静かに語りだす、美しい生地
このジャケットで、いちばん印象に残るのは生地です。
ブルーベースとブラウンベース、2種類のウールを使った切り替え。
見た目はとても穏やかですが、目を凝らすと、織りが均一ではなく、細かな表情が静かに連なっているのがわかります。
起毛した柔らかさではなく、滑らかでありながら、隙間のない密な織り。
空気を含んでいるように見えて、触ると芯がある。
その質感のギャップが、この生地の不思議な魅力です。
袖に使われたブラウンの生地も、角度によってストライプのように見え、単色では終わらない奥行きを持っています。
長く着てもらうことを前提に、考え抜かれたデザイン
切り替えの配置や分量、アンティークボタンとの組み合わせも含めて、全体のバランスはとても穏やかです。
目立つためのデザインではなく、時間をかけて考え抜かれた結果として、こうなっている。
着たときに説明がいらない、でも印象にはしっかり残る。その加減が、フランクらしいところかなと思います。
太めのトラウザーに合わせても、デニムに落としても、無理がない。それでいて、装いがどこか整って見える。
流行を追う服ではなく、この生地、この佇まい、このバランスのすべてに、時間をかけた跡が残っている。
一瞬の高揚ではなく、日常の中で静かに力を発揮しながら、日々の中で少しずつ信頼が深まっていく。
長く手元に置くことを前提に、選びたくなる一着です。