説明
最後に選ぶものまで、好きでいたい
服は決まったのに、鞄だけが決まらない。
Conkers
Postal Sling
Bedford Cord × Dry Wax
QUILPやFrank Lederの服を着る時、そんなことがよくあります。
服の生地や形が好きで選んでいるから、鞄にも、それに合うだけの表情は欲しい。
でも、鞄だけが強く出てしまうのも違う。
このPostal Slingがあると、その最後のひとつが決めやすいんです。
革靴を履く日にも、少しラフな格好の日にも持てる。
合わせやすいけれど、無難なところで収まらず、着ている服のムードをもう一段引き上げてくれる。
イギリスのロイヤルメールの郵便バッグから着想を得た、大きなショルダーバッグ。
肩に掛けたり、斜めに掛けたり、背面のハンドルで手に持ったり。
フラップのスナップは二段階で留められるので、荷物の量に合わせて膨らみも変えられます。
幅56cm、高さ40cm、マチ15cm。
数字を見ると結構大きいのですが、何も入れていない時は、身体に沿って柔らかく落ちます。
手に持つと、持ち上げたところから生地が折れて、また違う形になる。
大きさはあるけれど、形が固まっていない分、荷物の量や持ち方で見え方も変わります。
黒にしても、生地は隠れない
前回は、ブラウンのデッドストックコーデュロイに、黒いドライワックスコットンを合わせていました。
細い畝に浮かぶ柔らかな艶と、少し無骨な黒。
あの組み合わせは最高でした。
今回は、ベッドフォードコーデュロイの黒です。
縦に細かな畝がありますが、一般的なコーデュロイのような毛足はありません。
起毛した柔らかさよりも、織り目の細かな凹凸が見える生地。
コットン100%で、触れるとドライ。
光沢も控えめで、ハリのあるしっかりとした感触です。
古くから乗馬服や家具の張り地にも使われてきたと聞くと、この丈夫さにも納得します。
ただ、それを聞く前から「頑丈そうな鞄だな」と思わせる見た目ではない。
細い畝が黒の中に収まっていて、離れるとすっきり見える。
近づいて初めて、生地の表情が分かります。
前回の柔らかなブラウンから、今回はもう少し乾いた黒へ。
色を変えただけではなく、生地の選び方から、この鞄の表情を考え直したように感じます。
下半分には、HALLEY STEVENSONSのドライワックスコットン。
スコットランドのダンディーで生地づくりを続ける、1864年創業のメーカーです。
ワックスコットンと聞いて想像するようなべたつきはほとんど気にならず、さらっとした手触り。
それでも、生地が折れたところには独特の陰影があります。
上半分は、畝によって見える黒。
下半分は、皺や折れ目によって濃淡が出る黒。
乾いた生地同士だからでしょうか。切り替えは分かるのに、どちらかが浮いて見えることもない。
この鞄は洗えます。
ただ、普段は砂埃を払って、軽い汚れは湿らせた布で拭けば充分なことも多い。
そんなに頻繁に洗う必要はありません。
全体を洗う時は、品質表示に従って30℃で洗い、吊るして乾かしてください。
汚れは落としながら、使ってできた皺や擦れは楽しみたい。
ベッドフォードの畝や角が擦れ、ワックスコットンに持ち方の跡が増えていく。
その時、二つの黒はもっと馴染むのか、それぞれの違いが出てくるのか。
前回のはっきりしたツートーンとは違う、これからの変化も楽しみです。
知らなくても、ちゃんと効いている
そして、外から見えるこの切り替えだけでは、つくりの全部は分かりません。
内側にもドライワックスコットンが使われています。
コーデュロイと重ねて鞄を作り、その外側の下半分に、さらにワックスコットンを当ててある。
それで、底は三重になっています。
中を見て、外を見て、持ち直してみると、この柔らかさが少し不思議になる。
荷物を受け止めるところには、ちゃんと生地を重ねる。
でも、肩に掛けた時には、身体に沿って形が変わる。
スナップの裏には、丸く切った植物タンニンなめしのレザー。
力の掛かる部分には閂止め。
フラップの内側にはIDEALのジッパーがあり、引き手にもナチュラルレザーが使われています。
黒い生地の中に見える、この小さな革もいい。
使ううちに色が深くなっていくと、今とはまた違う見え方になると思います。
補強をしながら、持ちやすさも損なわない。
しかも、その仕事を大げさに説明していない。
僕が言わなければ、底が三重だと知らずに使う方もいるでしょう。
知らなくても困らないけれど、長く使うための仕事は、もうしてある。
当たり前のようにそこまでやってくれることに、作り手への信頼が増します。
肩に掛けるだけで、ちょうどいい
今回はもうひとつ、持ってすぐに分かる変更もありました。
ストラップが、前回より20cm短くなっています。
これについては、僕の意見が反映されたんじゃないかと勝手に思っています。笑
前回は結構長くて、買ってくださった皆さんも、それぞれ工夫しながら持っておられました。
その工夫に、その人らしい使い方が見えるのも素敵でした。
ただ、前回買ってくださった方には、ちょっとごめんなさいと言いたくなるくらい、今回の長さはちょうどいい。
バックルで調整して肩に掛けると、鞄を持ちたい位置に収めやすい。
この柔らかな形を、より素直に楽しめるようになりました。
いつか、この黒に別の布を
きれいに持てるのに、少し手荒に使ってもよさそうな安心感がある。
服との合わせ方にも、鞄の扱い方にも、気を張りすぎなくていい。
ハイテクな生地を使わず、コットンにワックス、革と金属で作る。
それぞれの素材を、必要なところに使ってある。
Conkersの『organic indulgence(自然体の贅沢)』という言葉が、この鞄を見ているとよく分かります。
好きな服を着て、この鞄を持って出かける。
そうやって使ううちに、黒い生地にも、小さな革にも、自分が持ち歩いた時間が残っていく。
いつか擦り切れたら、別の布を当ててもいい。
その時には、今の黒に何を合わせようか。
まだ新しい鞄なのに、そんなことまで考えてしまいます。