説明
憧れの記憶
大学時代に通っていたビンテージショップで初めて目にした『フリンジ付きのシルクスカーフ』。
そのお店のスタッフさんが、シャツやスラックスにきっちりと合わせたり、時には古いカバーオールに無造作に巻いたりしていて、その姿がとにかく格好よかった。
シルクの艶やかな光沢と鮮やかな柄の存在感は、まだ二十歳そこそこの自分には『分不相応』なものに思え、憧れながらも手を出せずにいました。
あのときに感じた距離感や眩しさはいまも忘れられません。
時の流れと変化
それから年月が経ち、白髪も混じるようになった今。
あの頃なら気後れしたアイテムも、自然に取り入れられる年齢になったと感じています。
そんなタイミングで現れたのが、このスカーフです。
デザイナーとの交差
デザイナー大淵氏が1980年代に自身で愛用していたヴィンテージ・シルクスカーフへのセルフオマージュとして制作されたもので、私が古着屋で抱いていた憧れと、氏が追い求めてきた哲学がひとつに交わる瞬間のようでした。
片面にはブランド最初期の1993年に登場したオリジナル・バンダナ柄を復刻。
もう片面はシンプルな無地。
クラシックと遊び心
両端のフリンジは1930〜50年代の紳士スタイルを彷彿とさせつつ、どこか遊び心を漂わせています。
光沢のあるシルクは動くたびに表情を変え、ただ無造作に垂らすだけで装いが一段と引き締まる。
艶やかさと無骨さが同居し、カジュアルの上にふっと気品を差し込む。
大人になったご褒美
かつては背伸びにしか見えなかったアイテムが、いまは静かに自分に馴染んでいく。
白髪が混じるようになった今だからこそ楽しめる『渋さ』。
大人になったことの小さなご褒美のように、そんなふうに思わせてくれる一本です